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逢瀬とて 凍え待ち居る 花哀れ
季節違(たが)えて 冬戻る夜は



蛙さん そこの田んぼにゃ 入るなよ
票と言う名の 愚者が感染(うつる)ぞ


冬の夜の しじま恋しや 里の春


笹波に 四日の舟は 揺られゆき


三日月を 水面に眺む 蛙かな




三日月よ しとどに酔いし 我が想い
届けて欲しや 愛しのひとに


蛙らよ 月は寝たぞや 我も寝る
宴の続き 明日にせぬか


畦行けば 蛙の恋の 行く末が
案じられるや 五日月夜は


星空も 衣替えかな 夏の来し


一雨で 草へ溺るる 廃れ里


往時には 夕餉の煙り 幾筋も
上りし空は 密と暮れんや


人無くも 営み永久に 廃れ里
野辺の草花 囀る小鳥 


苗の田で 水面の月を 楽しめば
いじわる蛙 月を揺らすや


どこまでも 深く沈まん 皐月闇
君を偲びし 我の想いは


我が生を 皐月の闇に 問うなれど
深きしじまは 何も語らずや
          字余り


父母連れて 何処に隠す 皐月闇


土手覆い スイカズラ花 咲き誇る
今際の母に 見せんが為と


君の香や 想い澱みて 皐月闇


君なくば 皐月の闇よ この想い 
その深みにぞ 眠らせ給え


夏来たぞ 寝坊のエンマ 早よ起きろ
そなた騒がにゃ 里の夜侘し








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