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待つひとも 既に無ければ 立待ちの
月を如何なる 想いで待つや 


立待ちを 待てぬ田んぼに 蛙らの 
春を祝いし 宴賑わい 


星の夜は 足元照らす 花明かり



移ろえば 花の盛りの 春もあり
君は何処で 何を眺むや


恋うひとよ 居待ちの月に さも似たり
焦れて尚待つ 我の哀れか


花散らせ 田には恵みの 雨の降る


山間(やまあい)に 消ゆる夕日は 四万十の
川面に踊る 妖精となり


人の世の 闇ぞ恐ろし 花の中
甘き香りに 酔えぬ時世や


椿散る 岬の道や 補陀洛に
想いを馳せて 先人偲び


咲き居れば 愛しさ募る 椿花
さだめに散らば 尚も焦がれて


温もりに 一際騒ぐ 蛙かな


花散らす 雨の帳や 忍び恋


日も暮れて 雨は静かに 野良の隅  
蛙よそなた 遠慮知らぬか


田に騒ぐ 蛙ら寝ろよ 夜も更けた
宴の続き 明日にせぬか
  

いそいそと 逢瀬支度や 老いゴリラ
二十日とも成りゃ 闇夜も同じ


アカペラに 酔おうて歌うか 蛙らよ
合いの手いれる フクロウ居るぞ 


夜更け山 犬と違える フクロウや


奥山に 赤子と泣くや アオバトは


エンマ殿 この暑さにも 声無いが
寝坊してるか 本家詣でか



苗の田に 蛙騒がす 夜の雨








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