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古池や 溺夢にカメは 転げ落ち


何想い 月を眺むや 鹿の仔は


尾根よりも 麓で見たや 梅見月


美しや 梅の十六夜 何鳴かす


末の世は 魑魅魍魎の 跋扈して
上も下らも 大騒動かな


立ち待ちや 紅梅照らし 君照らし
我は想いを 木陰に隠し


紅梅に 添えるは君の 白き指
妖しくあるは 月のせいかや


静か夜は 月も淋しき 一人空
小鹿も我も 寡黙に眺め


春浅く 居待ちを待てぬ 蛙らは
明日の温もり 夢みて寝るや


春来たと 粗忽の蛙 騒ぎ居り


菜畑や 君待つ月に 照らされて


一色(ひといろ)に 菜の花照らす 宵の月
君待つ我の 高鳴り奪い


条風に 蕾膨らむ 桜かな


船乗りが 難儀するかな 春嵐


亡き友を 春一番は 連れ騒ぐ


更けて尚 菜の花揺らし 春嵐


更ける夜は 寝待の月に 春嵐
騒ぐ菜花に 想いの乱れ


花冷えに 蛙も眠る この夜更け
二十日の月は 我を放さず


寒や寒 春に浮かれた 蛙らも
花冷え恨み 塒で鳴くや


月は無く 蛙も眠る この寒さ
星見の酒に 想いも凍え







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