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三寒に 想いの乱れ 凍えれば
四温の君を 焦がれて待つや


待ちわびた 四温は雨と 睦まじく


雨よ雨 想い冷やして 降れに降れ
月を待てねば 我は酒愛で


我が愛でる 酒を妬みて 雨たちは
この手止めんと 騒いで降るや


寒天に 星ら囁く 恋のあり


深深と 夢も凍える 褥かな


この恋よ 凍てつく夜に 尚燃えて


峰峰も 密と凍えて 星月夜


去るひとの 想い侘しや 雪の花


凍えるも まろき木の芽に 春想い


凍え身が 恋焦がるるは 褥かな


咲き誇る 梅花に惑う 鶯や


鶯よ そなた惑うも 無理からぬ
里野の梅花 我も酔わすや


ご時世じゃ 梅よ梅よは 憚られ


見上げれば 香りの中に 梅の月


訊ねれば 万象諭し 梅の花


白梅も 乙女月(おとめ)眺めりゃ 紅梅に


鶯や 何を好いての 口づけぞ


散る花に 束の間の夢 訊ぬれば
理の中 ただ去り行くと


条風や 春の薫りて 花は恋う








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