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大雪(だいせつ)や 地中に一陽 萌せるも
浮生の風に 凍えるばかり


風さえも 凍るを厭(いと)い 吹かぬとか
物好き我は 寒連れ遊ぶ


ひそひそと 噂話か 冬の星


石垣にゃ ビィービィ我待つ 里景色


冬来れば ビィービィ想うや ほろ甘く


人肌を 恋うれど我に 君の無く
月に凍えて 盃愛でんや
             字余り


足元が 紅葉に染まる 山の道
哀れ誘うや 氷雨の中は


君恋えば 師走の雨も 泣くような



見上げれば 乙女の月の ただ一人
星無き海に 誰を探すや


君待てば 頬染め来たる 居待ち月
その恥じらいに 我を忘れて


貫之が 道真偲ぶ 日向灘
眺むる我は 誰を偲ぶや


人の世に 泣くも笑うも 束の間の
儚き夢ぞ 霧と消えんぞ


故郷を 遠く眺めて 貫之を
偲べる我に 時雨は降りて


逢瀬とて 人目忍ぶや 二十日月
淡き明かりに 温もり寄せて


寒き夜に 待てぬは君と 弦の月


恋うるとて 万里離るる 星の海
見上げる我は 想いに凍え


逢瀬夜は 人目を忍ぶ 峠道
華燭の夢は 星と戯れ


契るとて 世に確かなど 無きものを
華燭の宴 抗い騒ぎ


巷だけ 不景気風の 吹き荒れて


風情とて 秋の深みに 散る想い
木枯らしの中 覚めて哀しや







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