75

鬼の子を 宥めて吹くや そよの風


雨よ雨 梢の寒や 紅葉散り


暇人よ 夕日送りて 月を待ち


想ふなら 夜長嬉しき しじま哉 



幽谷に 鬼の子並び 揺れるゆえ
夜にゃ逢えるか 鬼の親たち


あれこれと 想い巡らせ 夜長かな


獣(しし)脅し 賢い獣にゃ 役立たず
風情喜ぶ 我が為に有り


山あいの しじま破りて 獣脅し


夜も更けりゃ 落書き遊び 筆を置き
近う寄れやと 盃抱く


秋の夜は 紅葉褥に 天の川


静けさや 紅葉連れ逝く 我の恋


星たちも 凍えて居るや 暮れの秋


散る恋や 去り行く紅葉 暮れの秋


更ける夜は 月も無ければ 虫も居ず
我を慰む 盃一つ


夢恋いて 淡き想いの 乙女子が
夜半に浮かべん 葉月の君や


去る恋に 君の零せし その涙
紅葉に染まり 何処に行くや


欠け行くは 君の心よ 居待ち月
やがて消ゆるや 我への想い


足元に 温もり敷くや 散る紅葉
枝は凍えて 眠れもすまい



しんしんと しじまに冷えて 秋の夜


秋来れど 食の細道 歩く身は
鼻を閉ざして 片目を閉じて








inserted by FC2 system