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誰恋えば かほど染まるや モミジらよ


夕闇を 待てぬと来るや 紅葉月 


言の葉を 持たぬモミジよ その恋は
愛しのひとを 酔わせて散るか


手を握りゃ 嬉し恥ずかし 紅葉月
散るも散らぬも 風に任せて


酒のあり 虫らの歌も 月もあり
風情の野辺に 君も欲しぞや


秋ぞ秋 恋をするのに 良い季節(とき)よ
君のモミジは どなたに散るや


静か夜は 月の明かりに 君恋いて
乱れに散れる 紅葉の哀し


紅葉らよ 風に散るかや 雨にかや
損得勘定 ソロバンに散る


逝く秋に 命哀しと 虫の鳴く


満ちて足る 月に包まれ モミジらの
その旅立ちを しじまに送り


望月や 紅葉旅立つ しじま哉


恋う君を 隠して寂し 霧の夜は


静か夜は 霧に彷徨う 我が想い


この夜は 虫ら寝かせて 霧の野辺


刻々に 心焦がせば 日々(にちにち)に
膨らむ想い 欠けるを知れど


枯れ芒 風情に揺れて 紅葉月


冥土へと 誰を誘う 枯れ芒


儚げに 月と揺れるや 枯れ芒


枯れ尾花 おいでおいでと 誘うけど
美味い酒でも 有ると言うのか


望月や そなたの明かり 嫌うよに
霧に隠れて 二人の夜は





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