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秋の陽や 乙女の如き 振る舞いで
我を誘う 午睡の罠よ


夢野には 甘き香りの 乙女あり
覚めて切なや 午睡の畔


早々と 蛙は寝たか エンマのみ
我を悩ます 秋風の中


しじま夜に 君を偲べば 落ち葉積む


物思う 刻の静かに 夜長かな


しんとして 木の実の一つ 落ちる音


夏の夜は 乙女のスカート その丈よ


秋や秋 しじまの夢に 眠る森
枯葉踏む足 起こしやせぬか


秋雨や 虫の音隠し 月隠し


侘しきは 行く秋送る 里の雨


久方に 逢瀬の嬉し 乙女月
虫の音似合う お年頃かな


月愛でりゃ 肌に寂しや 秋の風
 

その空に 震えて居るや 乙女月
スカート丈の 短きせいぞ


山間で 健気に咲くや 槿花
待ち人いまだ 訪ね来ぬかや


戯れりゃ オラが夜の秋 更け行きて
歌の沙汰さえ エンマ次第よ


逝く秋を 尚も歌いて 里の野辺
散れる覚悟に 我が身糺すや


秋更けて 月野に渡る 風一つ
紅葉散らせて 想いを流し


星空に 無粋な花火 踊るなら
天の川から 水を掛けよか


花火とて 秋の終わりじゃ 掛け声も
たま屋かぎ屋を 寒や冷ややと


恋心 一つ連れゆく 紅葉かな





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