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蝉よ蝉 その鳴きざまは 何事ぞ


戯れに 太陽蹴飛ばしゃ 川の中
婆(ば)さま拾えば まな板待つや


三日月に 安らぐ我と 鳴く虫は


若者が 恋うる夏とて 老いぼれにゃ
耐えぬ暑さよ 穴掘り凌ぎ


秋ぞ秋 戯れ三昧 我肥える


首伸ばし 彼岸を待てぬ 曼珠沙華
君の言葉に 開かんものと


哀しぞや 人の作りし モミジ故
季節も知らず 紅染め立つや


足早に 秋染まりて 彼岸花


空までも 想いに深や 秋ゆえに


誘われて 甘き午睡の 罠の中
虫らの歌に 夜中を知るや 


枯れ枝で 木枯らしに揺れ 鬼の子は


鬼の子や 居眠り三昧 恨めしぞ 


寝転べば 鬼の子揺れて 星の海


虫の音や 尾花揺れるも 月の無く


野良に出て 汗に溺るる 残暑かな


恋うひとと 逢瀬の嬉し 星月夜


遠き日や すごいて遊び 赤まんま


街人が 水を求めて 秋旱


この恋も 凍えて逝くや 葉月闇


山の田や 風情に響く 鹿威し



浮生捨て 夜長嬉しと 闇に座し


村一つ 丸ごと消えて 山の中
猪垣だけが 無言に並び


もの想い 谷に座すれば 葉月闇
星の光りも 届かぬしじま


この庭に 柿はあれども 我食えず
熟する前に カラスが集う


時来たぞ 早く咲け咲け 曼珠沙華
艶な姿を 横目で山へ







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