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恋う夜は 虫らの歌も 切なくて


焦がれ身に 月の逢瀬も 無きならば
囁き草と 愚痴の酒酌む


静夜を 不気味に思う 我と虫
明日の木枯らし 牙研ぎ居るや


その笑顔 嬉しきものぞ 村娘
浴衣に花の 祭りの夜は


いつの間に 娘と成った 幼子よ
宴の最中 オムツが浮かび


月は無く 星らも無くば 虫たちよ
勝手に騒げ 我は酒酌む



この秋も 蜻蛉多くて 淋しけり


去るなれば 空に浮かぶや 我も亦
それも善きかな 戯るままに 


虫の音で もてなす故に 君よ来い
逢瀬の原に 月は無けりぞ


戯れに 君を抱き寄せ 囁けば
虫ら窺う このしじま哉 


恥ずかしは 芒(すすき)の原の 星明り
虫も覗くや 二人の逢瀬


その口に 言の葉無くも 芒らが
頷き居るや 逢瀬の原は


招かざる 無粋な客よ 夜の雨
甘き逢瀬も しとどに濡れて


哀しきは 君の心の モミジ哉


愛しきは 桃に浮かびし 君の顔


唇が 君を恋うるや 虫の原


肩抱けば 騒ぐ潮騒 星の海
囁き草も 言葉を奪い


口説けよと 虫に急かされ 星の夜


秋や秋 餃子おでんに 唐揚げも
おいでおいでと 胃袋待つや

戯れに 惚れたはれたの 空騒ぎ
俄作りの 恋景色かな







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