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星だけが 雲と戯れ 隠れん坊
月来る頃にゃ 皆夢の中


補陀洛の 海を眺めて 唐人は
安堵したかや 哀しみ居たか
          
足摺の唐人駄馬にて


古里が 風に乗り来る 潮の香や


歳毎に 暑気尚増す 此岸かな


太陽が 親の仇と 地上焼く
我は逃げんや 土中の涼へ


無礼にも 程があるぞや ホトトギス
そなたのせいで 月さえ消えた


涼風に 灼熱地獄 冷まされて
虫と憩いし この贅沢よ


求むるは ただ一陣の 涼の風
虫の音在らば 贅に尽きるや



晴れの日や 並ぶ雛壇 人形さん
顔は違えど 衣は同じ


太陽の 喧騒西に 去り行けば 
命洗いし 涼のしじま哉


死なずとも 灼熱地獄 味わいて
夜にゃ天国 味わい候


涼風に 寛ぎ居るは 我と虫


灼熱の 過ぎたる空よ 三日月は
さざめく星に 揺られて浮かび



夏の陽や 闌れる百合の 哀しけり


白百合や 気高き姿 その誇り
闌れる今は ただ哀れ哉 


白百合や 闌れる様を 晒すのは
恋うるひとへの 未練のせいか 


涼風や 夜空焦がして 夏の花


君恋えば この胸焦がす 火の花の
散りし夜空に 彷徨うばかり 
 

手ぬぐいを 絞りつ歩く 蝉時雨


この暑さ 路傍の石も 汗をかき



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