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立待ちに 君を想えば 恥らいて
絹を纏うは 尚愛しかな


立待ちよ 連れては来ぬか 彼のひとを
野辺の虫らも 待ち焦がれしぞ



里の夜は 月影蛍 水面星


恋うひとを 重ねて辛や 菜種月


涼風や 灼熱忘る ご馳走哉 


憎らしや 逢瀬の佳境が 照らさるる
臥し待ちなれば 床入り待てや


雲までも 溶けて消えたぞ この暑さ


藪陰に 早も咲いたか 姥百合よ
そこを動くな 外は灼熱


灼熱や カラス焼かれて 真っ黒け
下から焼かれ ナベも真っ黒 


近ごろは 昼間煩き 蝉の声
夜にゃ蛙の アカペラ騒動


月無くば 蛍に道を 尋ねんや
迷うも楽し 君と往くなら


清貧に 委ねしなれど この体
知らずのうちに 垢を纏うや


暑や暑 ウナギも昇る 土用かな


想い出に 縋る空蝉 哀しくて
還らぬ恋を 閉じ込め


恋わんとて 温もり失せた 空蝉の
夢に縋るる 様の哀れや


君待てど 二十日余りの 月模様
いつに来るやら 想いも欠けて


豊作や 不思議の国の 愛や恋
煮ても焼いても 喰えやせぬのに


生き物ら 早く逃げろよ 危ないぞ
六十億の エゴエゴ通る



笛吹けど 踊りもしない 石頭
老婆心さえ 馬念仏よ 


夕立や 暑さ隠して 君も消し


夏来れば 雪花よ蝉よ 田の蛙
雨の音まで 煩く候




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