57

人憂い 浮世憂いて 国憂う
愚老なれども 疲れて候



燃えるよな 恋を夢みて ネムの花


一輪が 夜を迎えて ムクゲ花


君も亦 叶わぬ恋に 泣くのかや
年に一度の 其処の河原で


出歯亀を 嫌う逢瀬は 雲の上
我も木陰で 君口説かんや



生娘の 恥じらい知るや 槿花
裾の乱れに 頬染め散らん



恋うる夜は 花間に浮かぶ 三日月の
舟に託そか 切なき想い


彦星や そなたの恋の 首尾如何に
我は地上で フラレて候


蟻の如 巷に溢る 愛や恋
如何な算段 運び居るやら



彼のひとの 心写せる 月模様
欠けて嘆くや 満ちて歌うや



蜩や しじま引き裂く その声に
木立も我も 哀しくあるぞ


涼風に 流れて楽し 蛍狩り


涼風は どこに誘う 恋う蛍
就いて行くなら 君に逢えるや


涼風に 片恋流れ 蛍狩り


君恋えば 月の雫に 泣く菜花
てふ誘わんも 凍えるばかり


我が夢は 我のものぞや 我の為
我が今をぞ 我に与えん


夜もすがら 虫の音酌みて 我は酔い



乱るるは 想いに浮かぶ 君の影
肌も忘るや その温もりを  


人間よ 口に零すは 美辞麗句
その手が為せる 傲慢の術 


何処かで 笛の音あれば 踊りだす
心貧しは 浅ましき哉


ありがたや 平和違えて 人腐る




inserted by FC2 system