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戯れに 犬の鳴き声 真似てみりゃ
束の間消える 蛙の歌は


梅雨空や 雲の間に間に 十三夜 


見上げれば 乙女の月は 雲の陰
誰に焦がれて 零るる涙


 
里の夜を 引き裂き暴れ 送り梅雨
騒ぐ雷鳴 誰の想いぞ



紫陽花に 優しや今日も 甘雨かな


一人ずつ 奪い連れ去る この雨は
 見送りし手の 数珠にも降るや


恋う君に 想い届かぬ 紫陽花の
切なく眺む 虫の垂れ月


彼のひとの 面影遠く 眺むれば
日毎に染まる イチゴの恋は


十六夜に 月も無ければ 君も居ず
しじまに語る アオバズク哉


十六夜や 恥らう月に 尚焦がれ


立待ちに 君の姿を 探せども
宛てなく舞える 蛍の哀れ


人も無き 道を覆いて 野の薔薇は
誰の心を 引き止め咲くや


その恋に 為すすべも無く 囚われて
逃れも出来ず 蛇結茨よ


遠目にて 満ち足らざれば 迂闊にも
寄りて捕まる サルトリバラや


しとしとと 誰の涙や この雨は
友を失う 我の涙ぞ


か弱くも 刹那に生きる 蛍ゆえ
一夜の夢に 舞い痴れる哉


おかみさん 強き者には 媚を売り
弱き者らは 野ざらしの刑


嬉しかな 人擦れ無きの 美しく
無垢の道をぞ 歩ける君よ


恋蛙 騒げば我の 子守唄



そぼ降れば 昨日が濡れる 老いの日々
晴れる明日なら 旅立つもよし




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