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恋う故に 焦がれて燃えて 灰と成りゃ
後の始末は 五月雨頼み



星も無く 月とて見えぬ 五月雨夜
蛙の歌に 誰(たれ)を恋わんや



想ふ事 身に纏わりて 皐月闇 



五月雨よ 想いぞ連れて 去り行けや


恋うひとの しぐさ浮かべて 皐月闇


月星も 家出したよな 皐月闇
我が夜の夏と 蛍の宴



野良だけが 夜も賑わう 老いの里
枕に通う 蛙の恋は



恋う夜よ 想いの一つ 佇めば
焦がれる蛍 鳴く蛙かな


上弦に 星の騒げば 負けまいと
蛙の歌よ 蛍の舞いよ


夕闇に 浮かぶ三日月 ただ一つ
若葉の海に 見え隠れゆく



焦がれ舞う 蛍からかう 蛙かな


黄泉の国 想い浮かべて 皐月闇


子を捨てて 柵捨てて 親捨てて
為すも為さぬも 生き地獄かな



若鹿も 恋をしそうな 乙女月


老いぼれが 眺めて良きか 乙女月
その美しに 酒は美味しも


自惚れに 満ち行く月や その哀れ
欠けるを知らば 人目を忍び



流行りとて 猫も杓子も 片道の
切符手にして 急ぎ旅かな


縁有りて 生まれしこの世 何故嫌う
父母に送られ 逝く遣る瀬無さ



満つるとて 誰も知らざる 雨の月
寝待の頃にゃ 顔を出すかや



鉢巻も スピーカーも無き 夜の田に
票を求めて 蛙の選挙






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