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散る椿 如何に想いて 君は去る
永久の恋ゆえ 躊躇いもせず


散るもあり 残るもありし 椿花
黄泉の主に その香届けや
            
誰恋て 涙に咲くぞ 椿花
君亡き庭で 月まで泣かせ


月さえも 涙の中に 眺むるや
主の去りし 庭の椿よ


散る花の 想い鎮まる その心
何処の果てに 消え行くものぞ

友の庭にて
亡き君に送る五首





田起こしを 知らぬと咲くや 蓮華草


恋恋に 乙女がむせび 泣くそうな
十六夜雨は 涙を隠し 


花遅れ 月まで遅れ 里の夜
君も遅れりゃ 朝日を待つか


国乱れ 人心乱れ 山河さえ
古忘れ 乱れて候


君は居ず 月も無ければ この夜は
花冷えの中 星らと凍え


明ける里 黄砂洗いの 雨に濡れ


寝坊して 今頃咲くか 山桜
里の田んぼにゃ 苗が見ごろぞ


花冷えに 更け行くなれば 田の蛙
騒ぐを忘れ 塒に籠もり


朝焼けか 黄砂のせいか 染まる里
しじまの中に 野良は寝ぼけて


我が顔を 見る度友の 言う言葉
今度は如何な 遊びをするぞ


更ける夜は 月も寂しの 花曇り


蛙らも 凍えて眠る 花冷えや


苗の田に 凍えて騒ぐ 蛙かな


片恋に 眺むる月の 満ち足らず
散り行く花の その心かな


目に寒や 椿と眺む 君の月


往く先は 何処なりしや 同胞よ
花も狂えば 想いも乱れ


春の夜は 浮世捨てての この野辺よ
纏う汚れを 脱ぎ捨て飲むや


人の世は 斯くも危うき もの成るか
想い至れば 只哀しきぞ







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