佐保姫の 笑顔嬉しも 吹く風に

 冬の欠片が そこかしこ哉 




静けさに 愁いを秘めて 竜田姫

 去りし紅葉に 誰(た)の恋託す




この庭に 数多の花よ 競い咲け

  香り運べや そよと吹く風




涼風を 待って居たのか 丘の上

 十六夜月の 澄まして上り




眩しさに そびえ立つかや 雲の峰

 我は焼かれて 灰と成りしぞ




川風に 微笑揺れて ネムの花




立ち止まりゃ 汗が尚噴く 草いきれ




深山の しじまを破り けら達は




月影に 君を誘い 抱き寄せる

 白き栗花 甘く香らば




徒然に 君の面影 偲ぶなら

 月に騒ぐや 遠きあの夜が




探梅は 凍えて宜し 鶯や




野辺の恋 甘き逢瀬を 恥じらいて

  乙女の月は 薄雲の中




その笑顔 野辺の椿と 競い咲き




物書きや 一字の重さ その闇に

 蠢く蟄虫 のたうつ身哉 




ぬばたまの 君の髪をぞ 指梳かし

  愛しと想ふ 月明かり哉





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