暈さして 嫁に行くのか 乙女月

 虫と蛙は 祝いの歌を




更ける夜は 蛙の歌に くるまれて

 星も風車も 静かに眠る




故里の 写真に浮かぶ 父母の顔

 草生い茂る 我が家の辺り




更ける夜は 星のロマンに 酔いたきも

 菜種の空は 許しもせずや




立待ちの 月も褪せるや 桜花

  その美しに 風も鎮まり




この夜を 独り占めする 桜花

 君無き我は 虚ろに眺め




桜花 かくも賑わい 咲き居れど

 その散る様に 尚も惚れるや




散るは善し 移ろう季節(とき)の 道行きに

  我が想いを いざ連れ行かん




早々と セッカの君の お出ましに

 悩める日々の 始まりを知る




如月や 一枚羽織り 月愛でん




ウグイスの 鳴き止む町の 平和かな




懐かしの 君の笑顔や 今朝の里

セピアに染まる 黄砂の中に




君逝きて はや一年(ひととせ)か ヤマガラの

  墓地に偲ぶは 在りし日々らよ




現し身は 時に追われて 向われに

  君の姿の 無きを知るかな




青山に 移ろい留めた 我君は

あの日のままに 静かに眠り




去るなれば 日々に失う その影よ

  せめて残さん 我の証を




雨毎に 色の移ろう 田んぼかな




雨や雨 田には幼き 苗たちが

 恵みの中に 明日を歌うや




温もりを 失くした稲の 子供らは

  蛙の歌に 泣く泣く寝るや












inserted by FC2 system