梔子は 語りはせねど 香りたち

 君の心を 染めてぞ咲ける




装いも 慎ましやかに 撫子の

胸に秘めるは 誰(た)の面影や




君を待ち 恋うる想いに 胸焦がし

 今宵も咲くや 月見の花は




降る星を 宿して咲くや 鈴蘭の

  零す涙よ少女の恋よ




ゆらゆらと 風に揺れ居し つわぶきの

  背伸びの花は 黄色く笑い




畑焼きの 煙は野良が 好きとみえ

  空に上らず 地を這うように




モミジ山 頬のモミジに 散るモミジ

  恋のモミジは 川行くモミジ




明日知れぬ 我は益荒男 散る時は

   人知り難き 奥山の露




気が付けば 寝待の月も はや高く

    童心に 別れを告げし




臭木菜は 炎の中に 黒真珠




やれ嬉し 囁き草が まだ騒ぎ




孫帰り 残る寂しさ 寛ぎよ

どちらも我の 確かな想い




乙女らよ 燃えるその恋 在るなれば

   冬の足音 恐るに足らず




束の間の 恋に酔えるや 武士の

  情け哀しき 紅の夢かな




血に染まる 阿修羅の明日や 一夜恋

   滾る想いも やる瀬無きまま




もの言わぬ 一輪の花 その心

 知りたるなれど 武士我は




更ける夜は 冬の足音 偲ばれて

  温もりの夢 求めて寝るや




その花に 永久は無かりと 知りたるも

  惜しみて余る 潔さかな




我が里に 紅を染めしは ハゼの木と

  彼の人恋うる 乙女の頬や




冬来れど 乙女に吹くは 春の風

  愛し恋しと 夢の中まで












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