老いぼれにゃ 待ちきれぬぞや 寝待月

   そなた出る頃  白河夜船




北風は 揺りかごなるや 蓑虫の

   褥の夢を 羨み眺む




朝毎に 秋の気配の 深まりて

  夜毎に星も 輝きて在り




君恋えば 言の葉染める モミジかな




月無くば 束の間集う 井戸端に

   何を囁く 数多の星よ




三日月も 風邪をひきそな 神無月





長袖を 欲しがりそうな 三日月や




秋冷えや 箪笥の中を かき回し




深山に 座して眺める 木漏れ星

 息の間に間に チラチラ光り




囁きは 遠い夢かや タケニ草

 言の葉無くし 静かに揺れて




星々の 囁き耳に 羨むは

 声を無くした 囁き草よ




ヒタヒタと 寄せるや冬の 足音は

 闇に紛れて 近付きてあり




言の葉を 纏いて眠る 蓑虫の

 褥の夢は 春の陽射しか




静か夜は 想いの丈に 更け行きて

 遣る瀬無きかな この思慕の念




徒然に 何を想わん この夜長

 静まる闇も 言の葉待つや




夜長ゆえ 語る言の葉 尽きねども

 この楽しみを 明日に託すや




上弦の 月を揺らせて 鴨泳ぎ




鴨泳ぎゃ 水面の月は 数を増し

 思わぬ贅に 眺むやしばし




月既に 西に傾く この夜更け

 独り眺めば 虫の音一つ




更ける夜は 遠慮するかや 風さえも

 庭の風車を 静かに回し




更ける夜は ただ静かなり この里は

 月の足音 聴けそうな程




秋なれば 雲無き空に 月一つ

 自惚れ居るも 宜し風情よ




四季問わず 元気に騒ぐ スズメ哉









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