虫よ虫 夜毎に恋を して居ると

 浮気者とて 指さされるぞ




そよそよと 揺れる乙女や ネムの花




峰々が 白く煙るや 遠景色

梅雨の間こその この風情かな




鳥たちも 昼間の暑さ 応えたか

 虫の音だけに 更ける里かな




セッカさん 天に向かって 飛び居るが

  太陽怖いぞ 黒焦げ成るぞ




ヒッヒッヒッと 太陽求め 昇りしも

焦がされセッカ ギョギョギョと帰る




この空は 我を苛めて 楽しむや

 昼に雲掃き 夜に雲集め




コオロギや 今宵の歌は 誰の為

 熱こもるなら さぞやのお方



夜の帳に 降る雨は
愛しの君の 傘奪い
我の心を 嘆かすや

夜の帳よ 降る雨よ
何故に隠すや 彼のひとを
この切なさを 如何にせん




恋うるなら 想い焦がさん 蛍ぞや

たとえこの身は 灰に成るとて



重苦し 今にも泣かん 空模様

里の野辺には 鳥だけ騒ぎ




里山に 沈む夕日の その後を

三日月舟は そぞろに行くや




鳥たちよ 陽は沈んだぞ 早よ帰れ

 庭の虫らの 歌が始まる




キラ星の 間をぬって 天の川

流るる星を 掬ってみたや




弱いくせ 神と威張るな 人間よ

自分で首を 絞めて居ぬかや




黎明も 黄昏も無き ネット海

 あるは煌く 数多の夢よ




雨音に 明けるや里の 野良景色




雲海の 果て成る所 島も無く

 かの大海を 偲びてしばし




雨殿よ ザーッと一降り 落とすなら

 我は涼しく 眠れるものを




虫たちよ 夜も更けたゆえ もう寝ぬか

 明日も恋に 歌うその身ぞ







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