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偲ばるる 蛍眺めし 君の夏
小夜の嵐は 奪いて去るや


それぞれに 賑わい更ける 里の夜
我は寡黙に 盃愛でて


我が眠り 今宵も奪う 蛙かな


蜩に 涼をもらって 山の路


蜩の 間に間に嬉し しじまかな


四万十(しまんと)や 四十万(しじま)舞い飛ぶ 蛍かな


空に青 無けりもここに 露の花


夏や夏 焼かれて蒸され 汗塗れ
怒る雷雨も 誰の咎ぞや


汗の陽よ 汗の野良には 汗の蝉
汗噴くこの身 汗に溺れて


一斉に 浴びせる如や 蝉時雨


寛ぎを どこに隠した 暴れ梅雨


愛でんとて しじまの風情 どこへやら
嘆きの我に 暴れ梅雨吠え


腥(なまぐさ)に 湿陰生じ 半夏生


君の笑み 流るる星の 連れ去れば
虚ろの空に 何を眺めん


焦がれるは 月見の花よ 舞う蛍
去りしひと恋う 未練の我よ


戯れりゃ 夜目に恐ろし 半化粧


泣く月に 梅雨の夜更けて 槿逝き


あの島に 小舟漕がんや 雲の海


柵を 捨てて眺めん 雲の海
君の在るなら 尚嬉しきも


柵を 捨てて眺めん 雲の海
君の在るなら 尚嬉しきも










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