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この雨じゃ 声も無きかや 夜鳴き鳥
野良に騒ぐは 蛙らだけよ


雨よ雨 夜鳴きの鳥ら 飲み込みて
ぬしは蛙に 飲み込まれしか


彼の恋も 移ろい咲くや 紫陽花と


紫陽花の 移ろい咲くは 哀しども
永久の無けりは この世の常と


恋ふれども やいてやかれて 夏の陽は
こがす想いの 哀しと知るや


忙しなく 雪花の焦がす 恋数多


爪紅よ 愛でたきなれど 行く季に
添えぬこのみは 触れも出来ずや


熱情に 燃えて我呼ぶ 花カンナ


西の陽に 尚も燃えるや 恋カンナ


蛙らも 夏の陽避けて 稲の陰


美辞麗句 踊れよ踊れ かみの上


有り難や 平和たがえて 我腐る


星々よ 月は寝坊ぞ さあ騒げ

 
月の無く 君も無かりし この夜よ
逢瀬に酔うは 蛍らだけか


星闇に 漂い浮くや 仙人草


蛍らの 逢瀬に我は 酔い痴れて
月を待てねば 蛙に眠らん


今まさに 降らんとするや このしじま
蛙らさえも 固唾をのんで


偲ぶなら 叶え岬に 鳴く蝉の
時雨に濡れし 遠きあの日よ


面影の 近くに浮かぶ 彼のひとよ
蝉に偲びて 蛍に偲び


漆黒に 沈みゆく哉 皐月闇










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