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三椏の 明かり点して 木立闇



鶯も 心寒そに 雨に鳴く



咲く梅は 誰を待つやら 雨の中



稲の子は 車に揺られ 誰が田へと



今日もまた 野良へは行けず 菜種梅雨



どしゃ降りや 山のものらは この雨に
其の身隠せず 濡れて眠るか



彼のひとが 隠れて泣ける 菜種梅雨



月さえも 風情に泣かす 菜種梅雨



山々を 奪いて隠す 菜種梅雨



菜種夜は 逢瀬隠して 霧の道



蛙らも 遠慮に鳴くや 菜種夜は



この夜は 二人のものと 霧の言ふ
逢瀬に酔えば 時さえ止まり



音も無く 菜種の梅雨の 夜明けかな



季戯れて 蟄虫恨みの 雪ぞ舞う 



ヒュウヒュウと 今日も暴れる 涅槃西風


山桜 散らせて吹くや 涅槃西風


今日もまた 菜種の梅雨に 囚われて












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