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恋うる身は 夜長の憎や 月憎や



廃て村に 風のみ騒ぐ 去年(こぞ)今年



枯れ尾花 月待ち立つも 只寂し



その姿 栄華は何処ぞ 枯れ芒



小春日や 枯れ野の夢は 空泳ぎ



木枯らしに 風情奪われ 紅葉泣く



鬼の子も 汗をかきそな 小春日や



往く秋を 惜しみて枝の その想い



木枯らしの 騒ぎて里に 冬の来し



悠久も 哀しきものぞ 寒の月
地表の塵に 明日の無きとか



風よ風 何に腹たて 騒ぎ居る
初日も怖じて 雲の中ぞや



欲しがれば 森羅の闇が 我笑う 
足りるを知らば 悩みも無きと



生い茂る 木立に眠る 廃屋や
三椏だけが 庭を照らして



木の陰も 冷たき雨は 落ち来るに
山の主らは 何処で凌ぐ



花びらで 何を占う 乙女月



潜れども 隠れ得ぬにほ 水清き



マナヅルの 親子慌てる 野焼きかな



負けぬぞと アロエ燃え立つ 雪の庭



新雪に ウサギが残す 足の跡



独り身は 淋しくないか 枯螳螂





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