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その美貌 哀しき程や 後の月



逢瀬夜も 雲に遅れて 乙女月



南国に 風花の如 蒲の穂は



木枯らしの 騒ぐ日哀し 里景色



行く秋は 木枯らし騒ぐ 胸騒ぐ



木枯らしは 染まぬ紅葉を 奪い吹き



木枯らしは 君無き胸に 只吹いて



温もりを 浚えて憎や 木枯らしは



木枯らしに 恥じらい盗られ 蔦の恋



日溜りに 真鶴憩う またび田や



フクロウと 木枯らし眠る 夜静か



目に甘く 食べてくれよと 冬苺



地面にも 味覚のありと 寒苺



しじま夜は 囁き草も 月に揺れ



物言わず 枝々巡る 笹子かな



笹子居て 木漏れ日動く しじま哉



梟の 鳴き声伽に 夢みんや



君恋えば 四方山浮かぶ 夜長かな



座す闇は 想いの眠る 山眠る



眠る山 すまに押し遣り 君恋わん







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