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麦の子が 凍えやせぬか 星の夜は



鳰(にお)の目は あの世この世の 何を見る



彼のひとを 想いて一つ 寒椿



恋一つ 悴み泣ける 夜のあり



落ち葉踏み 鹿は逢瀬か 角軽げ



色半ば モミジ奪いて 木枯らしは



餅食えば 島の香りに 母想ふ



時雨るるは 君恋う我の 胸の奥



君探す 足の彷徨う 落ち葉道



往く季(とき)に 踊りて哀し 落ち葉かな



夢果てりゃ 落ち葉は終の 吹き溜まり



夢の褪せ 風に眠るや 落ち葉恋



その心 如何にと眺む 落ち葉かな



清き水 潜りて鳰(にお)の 早や足よ



澄む川よ 鳰(にお)に隠るる 浮き草(くさ)も無し








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