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古の 村は原野の 蝉時雨



この恋を 冷まして降るや 秋の雨



更けて尚 人肌恋し 秋の雨



静けさや 夜と言う名の 海泳ぐ



星さえも 君の恋しと 逢いに行き



侘し身は 木枯らし眠る この夜に
寝待の月を 伽に夢みんや



君在らば 想いの数多 溢るるも
言葉に迷ふ 寡黙の我は



君の葉の 七色散らば この枝は
心寒きに 悴むばかり



諍いは 風吹く夜の 枯れ芒
ただ只揺れて 安らぎ知らず



山既に 虫の音無くば 梟の
連れ呼ぶ声が 尾根越え届き



花仕舞い そろそろせぬか 野の槿



眠る山 起こして鹿の 恋騒動



言の葉の 散りて悴む 我の夜



落つ木の実 一つのしじま 山眠る



梟の 鳴き声遠く 山眠る



木枯らしの 騒ぎを前に 山眠る



落ち葉さえ カサとも言わず 山眠る



侘び寂びを 我に教えて 山眠る





螳螂

こもごもを 喰らいて今か 枯蟷螂



その斧で さだめ刈ったか 蟷螂よ



枯蟷螂 修羅を見詰めて その顔か



子の為と 伴侶殺めて 修羅蟷螂



君になら 狩られてみたや 恋蟷螂



カマキリの 恋を羨み 独り野は






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