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猪垣に　守られ居たは　遠い日か
ぬた打つ窪み　母屋の辺り



団栗よ　屋根を転がり　門出でか

落ち葉らと　木の実の歌う　山の夜



夜寒とて　毛皮の鹿は　寛ぎて
単の我は　囲炉裏の守りよ



しじま夜は　月さえ密と　上り来て
荒れ田に集う　鹿らを照らし



鹿たちよ　早く早くに　恋をせよ
殺生人の　季節が来るぞ



山の夜は　しじまの中に　安らぎて
鹿らが恋に　酔えるも楽し



葛掘るは　昔人間　今は猪(しし)
移ろいあれど　安らぎ無けり



竹伐るに　かぐやの隠れ　潜むよな
美し竹を　探して日暮れ



この竹で　何を作ろと　思ふとき
至福が我を　酔わせて候



竹よ竹　割って削って　尚炙り
飯にも成らぬ　戯れ楽し



孟宗や　淡竹サン竹　四方竹
矢竹無粋で　支那竹美味や



竹よ竹　釜に成るかや　碗も善し
箸も大事ぞ　孫は尚善し



海の如　波打ち騒ぐ　枯れ芒



涼風に　サラサラ歌う　笹や善し



潮騒が　野分に遊ぶ　竹の里



ザァーザァーと　竹波騒ぐ　野分かな



日もすがら　芒いじめて　木枯らしは



竹藪に　礎のあり　廃れ里



猪(しし)垣も　雑木に埋もる　村哀し