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笛の音が 其処かしこより 聞こえ来し
鹿らが恋に 忙しき夜は



廃れ家よ 軒の瓢(ふくべ)に 歳を聞き



鬼灯や 誰に恋して その色ぞ



鬼の子も 親を恋うるや チチと鳴き



吹き初めし 木枯らし哀し ヒュウヒュウと



木枯らしに 想い攫われ 夜寒かな



胸の奥 泣かせて吹くや 木枯らしは



草草も 虫らも鳥も 冬支度



鬼灯の 照らし居るのは 草の道



鳴らさんと 顎の疲れし 鬼灯や



君の内 点して嬉し 鬼灯は



鬼灯が 何を照らすや 廃れ村



作法より 見た目気にして 八重槿



床しさを 忘れて八重の 梔子は



山上に 弁当不味や 放屁虫



笹揺れて 夜の里野は 野分かな



星空に 雲を走らせ 野分吹く



諍いや 夜の帳の 野分かな



団栗の 落ちるを聴ける 夜嬉し



団栗が 落ち葉と遊ぶ しじま哉









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