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秋や秋 我が家が一つ 虫の中


鳴き声も キジバトだけか 秋の森


逢瀬夜を 妬いて居るのか 乙女月
そなた見詰めりゃ 抱きも出来ず


月よ月 一夜一夜に 美しく
星ら妬むや 虫ら讃えんや


満月や 朧々に 山の上


月原に 切なく歌う 鈴虫の
想い運ぶや そよ吹く風は 

 
虫の音も 凍えて庭に 雨の降り


十六夜月を 隠して雨の 憎らしや


木の葉らに 時節促し 秋の雨


まるごとに 秋の安売り 里の野良


今日もまた 我を苛めて 残暑かな


今はただ 惚れた腫れたに 歌う虫
やがての秋にゃ その身を削り


のんびりと 秋の歩ける 里野かな


早よ咲けと 我に急かされ 彼岸花
そなた咲いたら サマツが食える


秋の野は 日暮れカナカナ 宵の虫
夜中とならば フクロウ騒ぎ


秋の夜は 浮生忘れて 山の道
囁き草の 風情に酔って


偲ぶなら 法師の蝉も うら悲し


潮騒に 負けじと鳴ける 虫ら哉


蜩に 追われて秋の 陽も落ちる


柿の木に お手玉くくり 待ち居れば
サギは嫌じゃと カラスの笑う




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