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涼風は 夏に焦がした 恋攫い
往く当て知れぬ 星に託すや


涼風に 蜩法師 競い鳴き


涼風や 虫らと見上げ 五日月


徒然に 虫と交わせる 盃よ
君を偲べば 水面も揺れて


揺籃の 島へと向かう 月舟に
今も恋うると 文託したや


飽きるまで 眺めて嬉し 七日月
酒も美味しや 虫の音も善し


アオバズク 帰り支度に 忙しいか
この頃声も 聞けぬじゃないか


恋うる日々 幾許も無き この夜よ
そなた等歌え 我は酒酌む


盃に 虫の音浮かぶ 星明り
風情に酔えば 影ぞ抱かん


夕しじま 引き裂き騒ぐ 蜩や


迫り来る 夜を恐れて 蜩は


学び舎を 思い出させて 法師蝉


虫々が 想いに歌う 夜長かな


侘び寂びに 鈴虫鳴けど その傍に
風情壊して クツワムシ哉


審判を 震えて待つは 戯け者
オラが天下と 己惚れし罪


二人夜は 寡黙の我を 憐れんで
囁き草が 君口説かんや



涼風に 君の香探さん 虫の原
切なき歌に 想い乱して


蝉たちが 慌てて騒ぐ 残暑かな


陽射しさえ 荒み忘れて 法師鳴く


美しや 虫を鳴かせて 乙女月








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