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今日もまた 異国流離う 狼は
戯れ忘れ 字幕を追うや


谷越えて 蝉の時雨は 耳濡らし


耳濡らす 蝉の時雨や 木陰道


村一つ 包んで暑や 蝉時雨 



梅雨よ梅雨 そなた愚図れば 夏惨や
出番数日 暦は秋に


惨や惨 やっと出番の この夏は
暦の秋に 怯えて過ごし


久々に 夜空に逢うは 十日月
その美しに 盃も酔い


何たるや 梅雨も明けたに 月は無し
虫だけ連れて 雲見の酒よ


夏の陽に 燻る想い 燃えたてば
花さえ恋に 咲き狂うとか
 

南嵐に 西震ありし 夏の月
雲に覗けば 想いの乱れ


嫌世や 荒む心の ただ淋し



暦さん 秋だ秋だと 騒ぐけど
里はいまだに 夏の業火ぞ



寒蝉の 声に誘われ 秋の立ち



里の夜は 立待ち隠す 花火かな


立待ちの 逢瀬哀しや 雨の中
月見の花は 俯き泣くや


立秋を 過ぎていまだに 名残梅雨


梅雨去り 間を置かずして 秋雨あり
前線忙しや 休暇も無けり


雨よ雨 夏を忘れて またの梅雨


蝉たちの 逢瀬奪うや 戻り梅雨
恋も知らずに 逝く身の哀れ


雨降れど 塒追われし 蛙らは
苅田の隅で 遠慮に鳴くや









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