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花は咲き 月も来るに 君の無く
野辺に萎れて 立待ちの夜


煩きは 冬の北風 荒む夜
夏の軒下 無粋の雀


懐(ゆか)しきは 廃れし村の 百合の花
亡きともがらの 庭の辺りに


涼風や 花も良けれど 君も好し
居待ち来ぬ間に 戯れ候


そよと吹きゃ 楚々と歌える 虫嬉し


竹煮草 夜に躍らす 涼風や


夜の山 来るなとばかり 竹煮草


涼風に 命洗われ 人心地


浜木綿は 潮風恋うや 身を捩り


廃屋の 庭を彩る 金糸梅
主偲びて 月と咲けるや


この庭で 酒を酌みしは いつの年
草生す中に 我は独りで


追懐へ 我を誘う 月明かり
咲ける花らは 君を香らせ


灼熱に 息を切らして セッカ舞い


空の青 雲の白さに 夏は来し


禿山や ゴリラの入る 陰も無く
霍乱すれば バナナが踊る


風止まり 汗に目覚める 午睡かな


竹煮草 隣の山じゃ 名を変えて
祭りの支度 して居るそうな


彼のひとよ 月は寝待ちぞ 好機ぞよ
今宵の逢瀬 心行くまで


野良は皆 命洗うや 涼風に
歌を忘れて 里夜の静か 


恋わんとて 月無き野辺に 咲きし身は
夜明けを嘆き 闌れてゆくや







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